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2016年7月 6日 (水)

蓮の華の下で睡る

カンダタ〜の太宰さん視点。
しばらくはpixivにあげたものもこちらにアップしていこうと思います。

以下、本文。

蓮の華の下で睡る

とろとろとした眠りの中、傍らの温もりが動き出す気配を感じた。こちらを起こさぬよう気を遣っているのであろう、そろりとした空気の流れを太宰は目を閉じたまま受け止める。
太宰の隣りで身体を起こしたのは芥川。彼はサイドテーブルにあったミネラルウォーターのボトルを手にしたらしく、キャップを開ける音を聞く。
(昨夜は沢山啼かしちゃったからなぁ…)
芥川がその口にボトルの中身を含み、こくりと喉を鳴らす様を聞きながら太宰はぼんやりそんなことを思う。普段なら芥川が身体を動かしたところですぐに目を開け声をかけるのだが、今日はこの心地よい微睡みを崩したくなかった。夜明けにもまだ早いであろう時間を思って、すぐに芥川も隣りに戻るだろうと太宰は待った。

しかし何故か飲み終えたと思われる相手は横になる様子がない。じっとこちらを見ている視線を感じる。如何したのかと瞼を動かしそうになるのを止めたのは、シーツの上に投げ出していた己の手の指先に触れてきた芥川の指であった。
はじめは指先にそっと触ったかと思うと、次に指を絡めながら掌を重ねてきた。
(これは珍しいことだ)
太宰はすっかり覚醒した頭で考える。二人だけでプライベートで逢うようになり、こうして肌を触れ合わせる関係になって幾月か経つが、芥川から太宰に触れてくることはまずないに等しかった。いつもこちらから触れて、それに躊躇いがちに触れ返すといった場面ばかりであったのは、以前の上司と部下という関係のせいか、それともその時期に厳し過ぎる態度をとっていたせいか。
思いがけない芥川の行動に太宰は次は如何してくるだろうと楽しくなってきた。むずむずする口元を堪えるように引き結び、相手の動きを待つ。
重ねている手に軽く力が加わり、やんわりと握られたのがわかった。と、そこから動くことがなく、もう終わりかと薄目を開けて盗み見ることにした。

目に入ってきたのは、ふわりと微笑みを浮かべ重ねた手元を眺めている芥川の姿。常のどこか不安げなこちらの顔色を窺うような表情はなく、ただただ幸せそうに愛おしそうに見つめる彼が居た。
(これは…狡いでしょ)

「楽しいかい」
気がつくと太宰は声をかけていた。
ずっと手元ばかりに意識を向けていた芥川は突然のことに驚きビクリと肩を震えさせる。そのまますぐに腕を引いて重ねた手を離そうとするので太宰は力を込めて握り返した。
「も、申し訳ありませぬ…」
と言っては再度手を引こうとするが、太宰はそれを許さなかった。やわやわと自分のそれよりは細く小さな手の感触を楽しむ。
「随分と熱心に眺めていたね。この先如何するのかもう少し様子をみていたかったのだけれど、あまりの可愛さに我慢できなくなってしまった」
言ってから、そう可愛いと思ったのだ、と確認する。ね、と微笑んで相手の顔を見上げれば、目の前の頬がほんのりと色づいていくのが分かりますます笑みが深くなる。
言われた芥川はほんの少し視線を彷徨わせた後、お互いの指を絡ませたままの手に視線を落ち着かせ囁いた。
「太宰さんの寝顔を見られるという滅多にない機会に少し浮き足立ちました。それと、美しい手だと思いまして、目が離せなくなりました…」

(美しい手、ね…この子にはそんな風に見えるのか)

「血に濡れた手だよ」
知っているだろう、と暗に示せば息をのむ音が聞こえた。
沢山の血に染まった手、沢山の人間を這い上がれぬ底に落としてきた手。この先どんなに良いことしても、落としてきた倍の人間を救い上げたとしても、その事実は変わらない。誰かが許しても、自分は忘れない。忘れられない。
現に目の前に居るこの子も拾い上げもしたが、放ってもきたではないか。そう、気にかけ将来を考えていたとはいえ、置いて出てきたことに変わりはない。それは人によっては落とされたという見方もできる。
そんなことを考えながら、俯いたままの芥川を眺めていると泣きそうな顔で見つめ返してきた。

君が泣くことはないんだよ。
たとえ血に塗られた手だとしても、私は君を離してやらないし、やれない。
このまま君と蓮の華の下で睡りたいだけなんだ。

ゆっくりとその身体を引き寄せて唇を重ねる。
頬に零れ落ちてきた粒はふたりの唇に吸い込まれて消えた。

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