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2016年8月10日 (水)

日付変更線越えちゃったボクら

今日はハグの日らしいので太芥にハグしてもらおうと思ったらなぜかお泊まりに発展した。越えちゃったのは日付だけ。
『後遺症/恋しよう』設定の学パロです。

投稿日もハグの日越えた…

日付変更線越えちゃったボクら


夏休みの図書館は大盛況だ。
児童や学生たちが所蔵する図書と涼を求めてやってくる。いつもよりも密度の上がった館内は「お静かに」の張り紙の主張も大人しく、さざめきが溢れる。
それでも市の中央図書館ともなれば隔離されたキッズスペースや、学習室が設けられさざめきから遠ざかることが出来る。
高校最初の夏休みを過ごす芥川龍之介も運良く確保できた学習室の席でじっくりと時間を掛けて課題を済ませたあと、書架の方へと降りてきて文学棚の辺りを眺めていた。
一緒に暮らす中学二年の妹が合宿の為三日程家を空けるので、その間のんびりと本を読んで過ごそうと借りる本を吟味していたのである。
馴染みの作家にしようか、それとも今まで読まなかったタイプの作家にしようか考えていると横から声を掛けられた。

「あれ、芥川君」

聞き覚えのある声に顔を向けると、高校の先輩である太宰治がそこに立っている。
ゆるりとしたオフホワイトのサマーニットにブルージーンズというラフな格好に目を奪われる。そういえば、制服以外で会うのはこれが初めてだな、と芥川は気がついた。そんなことを考える芥川の今日の格好は黒いTシャツに黒のスキニーパンツという、夏にはいささか重く暑い色合いだが彼のワードローブは濃淡の違いはあれどモノクロで埋められている。

「こんにちは、太宰さんもいらっしゃっていたのですね」

同じく学生である太宰がここにいても不思議なことではない。芥川は軽く頭を下げて挨拶をする。
太宰は声を掛けておきながらまじまじとこちらを見つめるだけで動こうとしないので、不安になった芥川は「あの…」と声を出す。
それに気がついたように太宰が口を開いた。

「あ、いや、ごめん。私服姿を目にするのは初めてだったからちょっと戸惑ってしまって」

言って笑うと太宰は芥川の隣りにやってきた。芥川がさっきまで眺めていた書棚を覗き込んで続ける。

「芥川君がこんな閉館近くまでいるのは珍しいねぇ。妹さんも一緒に?」

視線をこちらに戻した太宰に向かい芥川が答える。

「妹は今日から二泊三日の日程で勉強合宿に出かけております。自分ひとりで食事の用意も気にかけることがないので、のんびり本でも読んで過ごそうかと選んでおりました」

「え?妹さんいないの?今夜はひとり?」

驚く太宰に芥川は頷いた。

「はい、今日と明日と、明後日の午後に帰ってくるまでひとりです。今夜は簡単に弁当でも買って帰ろうかと、こんな時間まで残っておりました」

芥川が言い終わり太宰の顔を見つめると、太宰は何かを考えるような風で顎に手を添えるとうんうんと首を縦に動かし、そして言った。

「芥川君、これから空いているのなら一緒に夕飯を食べないかい?というか、よかったら今夜家に泊まっていきたまえ」

突然の提案に今度は芥川が驚いた。
太宰とはあることをきっかけに先輩後輩の付き合いをさせてもらっているが、自宅に招かれる程近しいかと言うと明言はできない。それに芥川の方は妹と二人暮らしで、片方が不在であれば家にひとりで残ることは決まっているが、太宰の方は学校が同じだけという後輩を突然連れて行って不都合はないのだろうか。
そう思って素直に聞いてみる。

「太宰さんのご家族は迷惑なのではありませぬか?」

「うん?私の家族かい?私の家もしばらく家族の不在が続いて、今は私ひとりなんだ。だから、久しぶりに誰かと一緒に夕食を摂りたくて。いけなかったかな?」

太宰が首を傾げる。
芥川も最近気がついたのだが、この太宰のこちらに伺いを立てるようでいて、もう決定事項かのような雰囲気に持っていく流れがとてもうまい。
芥川に遠慮してしまう気持ちはあっても不都合は思い当たらなかったので、太宰がいいと言えば断る理由がなかった。

「では、お言葉に甘えてお邪魔いたします」

芥川の返事に太宰は満足げな笑顔を浮かべた。

図書館を出て道を歩きながら何を食べるか話している時に、太宰に今晩はどうするつもりだったのかと聞かれスーパーのデリカの話をしたら、太宰は行ったことがないと興味を示してきた。
値段の割に味も悪くなく、時間によっては割り引いているものもあるので見てみますかと芥川が提案すると太宰はノってきた。
さらに太宰は明日も予定がないのなら映画でも借りてきて夜遅くまで上映会をしようと言ってきたので、レンタルショップにも寄ることにする。
レンタルショップで何本か選び、スーパーへと移動すると太宰ははしゃいだ。いつもの習慣でショッピングカートを押す芥川の隣りであれこれと手に取ったり眺めたり、芥川を質問攻めにした。
おかげで奥さま層であろう女性陣の視線が痛かった。クスクスと笑う声も耳に入り、芥川は少しだけ恥ずかしさを覚える。

そんな風に騒いで太宰の家に着く頃には夏の陽もすっかり傾いていた。
太宰の自宅はオートロックのエントランスの広い高級そうなマンションで、スーパーの袋を片手にしていた芥川は尻込みする。
まごまごとしていると鍵を開けた太宰が手を引いて中へと連れて行った。
エレベーターを降り、自宅ドアまでくると太宰はもう一度鍵を使って開ける。

「さあ、どうぞ」

促されて芥川は靴を脱いで部屋に上がった。細長い廊下の突き当たった先がリビングダイニングらしく、広い部屋の真ん中に大きなソファと足下に毛足の長いラグ、その上に硝子のローテーブルが置いてあった。
ドアを開けて左側がキッチンで綺麗に片付いていて、水切りカゴにいくつかのグラスとマグが伏せてあるだけだった。
太宰は芥川から食料の入った袋を受け取るとキッチンの調理台の上に中身を出して広げていく。慌てて芥川もキッチンへと入り太宰を手伝った。
太宰は食器棚から皿やカトラリーを出すとリビングのローテーブルへと持っていく。芥川はデリカの容器の蓋やラップを外し、太宰の後を追ってリビングへと運んでいった。

太宰が食べてみたいと言ったものを少量ずつ買ってきたが、並べてみると結構な数だった。最後に太宰が冷蔵庫から冷えたミネラルウォーターを出してきて席について、食事を始める。
太宰は箸を付けたひとつひとつを「これは美味い」だとか「こっちは初めて食べる」だとか、感想付きで口に運んでいく。
蟹の身の入ったシーフードサラダが特に気に入ったらしく、箸を運ぶ回数が多かった。

夕食が終わり軽く片付けてから借りてきた映画の鑑賞を始める。
途中で眠くなるのを避ける為にアクションものにしたが、いつも以上に腹に入れていた芥川は物語の中盤辺りで眠気が襲ってきた。
見ながらも太宰がいろいろと話しかけてくれるので、はじめのうちは抗えていた芥川もいよいよ舟を漕ぎはじめ太宰の肩にこつんと頭を落とすようになってきてしまった。

「芥川君、寝るかい?」

いつの間にか太宰に肩を抱かれる形で揺すられていた芥川は瞬きを繰り返して目を開けようとするがうまくいかない。目元をこするようにしてなんとか目を開け、芥川は言った。

「いえ、まだ見終わっていませんし、大丈夫です。最後まで見ます」

両手で頬を挟み込むようにパンパンと音を立てて目を覚まそうとする。そんな芥川を見て太宰はくすりと笑った。

「いいよ、芥川君。無理はしないで」

「しかし、せっかく誘っていただいたのに先に寝る訳には…」

薄い眉を下げて見上げてくる芥川の頭を太宰はぽんぽんと撫でる。その表情はやさしげに微笑んでいた。

「明日もあるんだし、私ももう寝るよ。だから今日はここでお終いにしよう」

太宰の言葉を聞いて気が抜けたのか芥川がこてん、と寄りかかってきた。額を太宰の胸に預けて呟く。

「すみませぬ…」

芥川の甘えるような仕草に太宰は何故だか喜びを覚えて、その身体を抱きしめた。

「うんうん。また明日いっぱい話そうね」

抱きしめながらその柔らかい髪を撫でれば、芥川の細い腕が太宰の背中へと回り、ぎゅうと力が込められた。

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