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2016年8月29日 (月)

あなたにわたしのあとをのこす

朝チュン太芥。
甘く柔らかい話を書きたかった。

あなたにわたしのあとをのこす

背中に触れていた温もりが離れていく気配に彼の人が起きたことを知るが、気怠くも幸福を感じる微睡から醒めたくなくて瞼は閉じたままでいた。
絨毯張りの床をスルスルと歩く音、カチャリとドアを開ける音を聞いて、隣りに寝ていた太宰がバスルームへと移動したことが分かる。
未だベッドに横たわる芥川はじっと耳を澄まして彼の人の動向を追う。
太宰がすぐ近くまで戻ってきた様子を感じて、芥川はゆっくりと目を開けた。
目の前に太宰の背中がある。
細身ではあるがそれなりに修羅の場をくぐり抜けてきただけあって、広く逞しい背中だ。自分の頼りないガリガリの身体とは違う。芥川は上下する太宰の肩甲骨辺りをぼんやりと眺めながら思った。
太宰がいつものシャツに腕を通す様を見ながら、その背中にうっすらと残った陰りを視線の先に認める。自身の指先の痕だ。
昨夜、あの背中に自分は腕を回した。

—そう、そうやって掴まっていたまえ…

耳の奥にある太宰の甘い声を思って、シーツに投げ出した自身の手の先を見つめる。
太宰から与えられる快楽に、耐えきれず縋り付いた指先が力を込めてしまい彼の背中に痕を残したのだ。
そこまで考えてまた視線を自身の指先から太宰の背中に移した。
太宰は既にシャツを着ていて前身頃の釦を留めているのか肩が揺れている。その様子を黙って見ていると、太宰の動きが止まった。

「起きているのなら、声を掛けたまえ」

くるりと振り向いて太宰が言う。どこか呆れたような、困ったような、それでいて優しさを孕んだ表情に芥川は大きく目を見開いた。

「すみませぬ…」

思わず謝罪の言葉を口にすれば、くすりと笑う声がする。口元に手をやり含み笑いをする太宰と目が合った。

「怒っている訳ではないよ。そろそろ起こそうかと思っていたんだ」

「もう、行かれますか」

身体を起こしつつ芥川が問えば、太宰は傍らに腰掛けながら言ってきた。

「朝食まで一緒に居たかったのだがね、生憎と今日は朝一から仕事が入っていて。のんびりしていると、国木田君に命じられた敦君が私のアパートまで呼びに来てしまう」

敦、という名前を聞いて芥川の胸がチクリと痛んだ。何も言えずに黙していると、するりと頬に太宰の手が滑り込んできた。

「そんな顔をしないでくれたまえよ」

下瞼をなぞりながら太宰が言ってくる台詞に芥川は首を傾げる。情けない顔でもしていただろうか…不安になる芥川に太宰は微笑んで続ける。

「泣きそうな顔をしているよ」

きゅ、と薄い頬肉を長い指先で摘まれた。小さな痛みが伝わる。

「不機嫌な表情なら機嫌を取ってやろうと出来たのに。そんな寂しそうな顔をされたら甘やかしたくなってしまうではないの」

柔らかい笑顔の太宰が言う。芥川はもうその表情だけで胸がいっぱいになった。
寂しさは感じている。しかしお互いに仕事がある身で、しかもお互いに譲れないことだ。引き止めたりはしない。引き止められるとも思っていない。
だから、自分の些細な行動が太宰の心にほんの少しでも揺さぶりを掛けられたのだとしたら、芥川にとってそれは大きな意味を持つのだ。

太宰の言葉に自然と笑みが零れた芥川は昨夜のように彼の人の背中に腕を回す。
芥川は太宰の胸元に顔を寄せると規則正しく鼓動するその箇所にそっと口づけた。

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