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2016年8月26日 (金)

輝ける星

Twitterフォロワーさんの呟きに感化されて、文スト/初敦芥です。
太芥とは別軸の学パロです。
小松未歩さんの『輝ける星』がイメージソング。
夏なのに冬の話……

輝ける星

最寄り駅から歩いて五分、商店街アーケードとは反対側にあるコンビニで中華まんを買って、食べ歩きながら家路に就く。
それがまるで冬の帰り道の決まり事のようになっていたことに気付いたのはいつだったのか…芥川龍之介はケースの前で肉まんにするかピザまんにするか、はたまた奮発して角煮まんにするかとうんうん唸っている中島敦の背中を眺めながら思った。
自身は既に期間限定の胡麻あんまんに決めている。甘党の芥川は普段からあんまんを選択することが多いが、期間限定、の文字に惹かれて今日は胡麻あんに挑戦してみることにしたのだ。
まとめて会計をした方が店員の手を煩わせず、効率もよいため芥川は敦が決まるまで大人しく待っている。
最初の頃は早くしろと急かしたりもしたのだが、中華まんの選択で頭がいっぱいになっている敦にそれは逆効果で、全く決まらず険悪な雰囲気になったので、今は口出ししたい気持ちをぐっと抑えて待つことにしている。

「よし。今日は肉まん」

敦が振り返るのを見て芥川はレジへと進んだ。

暖かい中華まんをそれぞれ手に持ちながらコンビニのドアを開けて外に出る。
夜の冷たい空気が二人の頬を撫でる。敦は外に出た途端肉まんの包みを開けて、齧りついていた。餡が唇に付いたのか、あち、と小さく声を漏らす。
芥川はもう少し先に進んでから口にしようと考えていた。今口に入れても中の餡が熱すぎて味がよく分からないからだ。
そして、半分くれと言われるのを見越してそっと中華まんを割る。こうすれば餡の熱も逃げて食べやすくなるからだ。
その間にも敦は一口、また一口と放り込んで咀嚼している。肉汁から出る脂で唇がつやつやと光っているのが、街灯の頼りない明かりでも見て取れた。
しばらく二人は会話なく歩く。
コンビニを過ぎてすぐ住宅街に入るのだが、冬の夜の人通りは少ない。

「食べないの?」

三分の二を食べ終わっていた敦が、未だ口をつけていない芥川に話しかけてきた。
芥川は手に持った胡麻あんまんに視線を落として答える。

「少し冷めるのを待っていたのだ。もう食べる」

そう言って芥川が口に含むのを敦は嬉しそうに見るとひとつ頷いて自分も残りを口に入れた。
もぐもぐと口を動かし全てを飲み込んだ敦は空を見上げていた。芥川もつられて見上げる。
今夜はよく晴れていて、星がいつも以上に見えた。冬の夜空は夏に比べて空気が澄んでいるため、星がよく見える…とは誰に教えてもらったのかは忘れたが、なるほどなと思う。

「こんな町中でも結構見えるんだなぁ…」

同じことを考えていたらしい敦が呟くのを、あんまんをやっと半分食べ終えた芥川は聞いた。敦の方に残り半分の胡麻あんまんを差し出し「食べるか?」と問えば、うん、と笑顔で受け取る。

「冬は空気が澄んで、見えやすいらしいからな」

芥川は言い、食べるためにずらしていた首元のマフラーを巻き直す。
渡したあんまんを二口ほどで平らげてしまった敦も同じようにマフラーを直していた。
去年のクリスマスに贈り合ったプレゼントは、別々に準備したにも関わらず示し合わせたかのように同じデザインのマフラーで、色が白を基調にしてるか黒を基調にしてるかの違いがあるだけだった。
結果的にお揃いとなってしまったこのマフラーは、しかしお互いに好みのものであったため、とても気に入っている。

「なあ、芥川」

星空を眺めながら敦が声を掛けてきた。

「なんだ」

隣りを歩く敦に顔を向けて答えると、ゆっくりと顔を動かしこちらを見つめる瞳があった。

「いつか、あの星のひとつを取ってあげるよ…」

しばしの沈黙の後、芥川が固まっているのを見た敦はハッとする。
「あ、いや、えっと」などと慌て始める敦に芥川はわざと呆れたような声を出して言った。

「敦。こうして見ていると小さくは見えるが、あれらは太陽よりも大きな恒星だ。しかも何万光年と離れている。取りに行くのは容易ではない、といより不可能だ」

ぽかんと口を開いて聞いていた敦だったが、ふるふると首を振ると芥川に近づきぐい、とその左手を取って叫んだ。

「そうじゃなくて!ここに、あの、星っていうか、星みたいなのっていうか…今すぐって訳じゃないけど、その将来の約束を形にしたものっていうか…」

芥川の左手薬指をなぞりながら敦の声がフェードアウトしていく。
俯く敦のつむじに視線を落として芥川は言う。

「僕は、男だぞ」

敦が俯いたまま答える。

「うん、知ってる」

「僕は、頑固だぞ」

「うん、知ってる」

「僕は、我が儘だぞ」

「うん、知ってる」

「僕は…素直じゃない」

「うん」

そこで敦が顔を上げて、芥川を見た。見つめた先の芥川は泣きそうな表情をしている。そんな芥川の髪を撫でて敦は言う。

「でも、芥川は僕を好きだろ…僕も芥川が好きで、僕にはそれだけで十分だ」

にっこりと笑う敦に芥川は少しだけ視線を外して、それから握られたままだった左手をそっと持ち上げて薬指を右手の人差し指で指した。

「それならば、ここはお前のために取っておいてやる」

芥川が言うと敦はそれはそれは嬉しそうに笑って、大きく頷いた。

「うん!」

寒空に響き渡るような敦の声を聞いて、もう自分には輝く星があるのだと芥川は微笑んだ。

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