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2016年9月29日 (木)

純情キネマ

twitterのタグで「太芥を書く」をやってみました。
まずは、1rtでほのぼの太芥。ほのぼの…?になってるかどうか。
学パロで映画デート。

まだ、付き合ってません←

純情キネマ

「芥川君、土曜日は空いてるかい」

恒例になりつつある屋上での太宰との昼食時、芥川が食べ終わった弁当箱を包んでいると彼の人がそんなことを聞いてきた。
弁当を包んだクロスの端をしっかり結び、芥川は自身の横に置いて太宰の方に顔を向けた。
「空いておりますが、何か……」
そう答えると太宰はにっこりと笑ってチケットを二枚差し出してきた。そちらを覗くと土曜日公開の映画のタイトルと特別優待券の文字が芥川の目に入った。
「映画のチケットを貰ったので、よければ一緒にどうかな、と思って」
笑顔のまま手に持ったチケットをひらひらと揺らしながら太宰が言う。
誘われて断る理由もなかったので、芥川は頷いて同意を示した。

劇場はシネコン型なので太宰が事前に席を予約しておくという。最寄りの駅で待ち合わせて二人は電車に乗った。
そこそこ人の詰まった電車内で太宰と芥川は乗車口近くに立っている。若い女性の視線がこちらに集まっている気がするのを、芥川は太宰の所為だろうな、と思っていた。
実際には芥川もその視線の中に入っているのだが、そのことを太宰は気付いているが本人は全くといっていい程自身の容姿に無頓着だし、逆にコンプレックスすら感じているのかもしれない。
黒髪に白い肌、長い睫毛に縁取られた黒目の大きな瞳、痩せ過ぎとも思える細い体躯はどこか儚く人形のようにも思えた。
しかし、実際は息をしその瞳は相手を捉え低く柔らかな声音が言葉を紡ぐのである。
流れる外の景色を眺めていた芥川が太宰にじっと見られていることに気付き視線を寄越した。
「何でしょう……」
気恥ずかしいのか問うたあと瞼を伏せてきた。心なしか頬も赤いようだ。
「いや」
太宰も今の今まで考えていたことを口にするのも憚られて、一言だけ返すと黙ってしまった。
(綺麗で見とれてた、なんてここで言える訳無いじゃないの……)

先の続かない会話にどうしたものかと思っていると、下車する駅名を告げるアナウンスが流れたのでお互いにほっと息をついた。
電車を降り改札を出ると休日らしい賑わいに出会う。太宰が右に進むので芥川はそれに付いていった。歩いて五分ほどで目的地に着き、太宰が発券機を操作するのを芥川は少し後ろに立ち待っていた。
二人が観るのはサスペンスものだが、同時にラブストーリーも公開初日らしくカップルや女性同士のグループが目立つ。
男性だけの来場者がいない訳でもないが、上映作品の関係からか少なめではある。
きゃいきゃいと響く高い声に気圧されて芥川はなんとなく身体を縮こませた。
「お待たせ。ドリンクでも買いにいこうか」
発券作業を終えた太宰が振り向き芥川を促す。二人は並んで売店へと歩みを進めた。

ドリンクとポップコーンを買って入場口に行く。係員から半券を受け取ると劇場へと入っていった。
座席は半分ほど埋まっており、太宰と芥川も自分たちの席まで行くのに何人のかの前を横切らせてもらった。
席に着きドリンクのカップをホルダーにセットしたところで、芥川は太宰の耳元に顔を寄せた。
「結構人が入ってますね」
言ってまだ照明の点いている場内を見回す。
「そうだね。土曜日だし、一部には人気のある監督さんの作品らしいからね」
太宰は頷いて答えるとドリンクのストローを口に加えた。女性もちらほら見かけるが、男性の比率の方が高そうだ。スクリーンに映し出される鑑賞中の注意事項を述べるアニメーションを観ていると、徐々に照明が落ちて上映開始時間が近いことを窺わせた。

たまにポップコーンを口に運んだりドリンクを飲んだりしながら、鑑賞しているとアームレストに置いていた芥川の左手を太宰の右手が触れてきた。
驚いてそろりと太宰の顔を見ると彼の目はスクリーンに向いたままだった。ドキドキしながら芥川も正面に向き直ったが、今度は指を絡めてしっかりと掌を握ってきた。
目の前のスクリーンではクライマックスに向かって、登場人物たちが動き喋っているのだが、芥川はそれを目で追いながらも内容が全く入ってこない。
心臓がドクドクと激しく波打っているのと、重ねられた掌に汗が滲んでくるのを太宰に悟られるのではと気が気ではなかった。

結局エンドロールが流れ、照明が戻る直前までの二十分間ずっと二人の手は繋ぎっぱなしであった。
人が退場し始めざわめきが耳に入る頃、太宰も立ち上がり「出ようか」と芥川に声を掛けてきた。ドリンクの残っているカップを手に取り芥川も立ち上がったが、どこかふわふわとしていて足下が頼りない。
通路の手前で立ち待っている太宰の元に追いつくと、彼は芥川の耳に囁いた。
「ごめんね。どうしても手を繋ぎたくなっちゃって」
悪戯っぽく笑う太宰に芥川は一瞬ぽかんとして、次に少し拗ねた口調で告げた。
「最後の方は内容が頭に入ってきませんでした……」

太宰さんのせいです、と続く芥川の言葉に太宰は「ははっ」と笑って愉快そうに出口へと階段を下りていくのであった。

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