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2016年9月 2日 (金)

ふたり

チャレンジ一日一太芥!
太芥の新婚旅行は熱海と決めている。←ワタシの中で
そんな新婚旅行な太芥です。しかし場所の描写は熱海ではない…

ふたり

揃いの浴衣に揃いの羽織、足下の雪駄まで一緒なのは全て宿泊している温泉宿のものだからだ。
太宰治と芥川龍之介はとある温泉地にふたりきりで来ている。
古き良き温泉街であるこの観光地はもう少し待って紅葉の季節ともなれば老若男女観光客でいっぱいになるが、夏の終わりを色濃く残す初秋の今頃ではシーズンオフと言えて人影も少ない。
太宰と芥川が道で宿ですれ違うと言えば、第一線から退き人生の余暇を謳歌する壮年の夫婦か少人数のグループだけである。
皆どこか余裕を感じさせる人たちばかりで若い男が二人連れ立って歩いていても気に留める様子はない。稀にご婦人方に声を掛けられるが、女性と言うのはいくつになってもおしゃべりが好きなもので、ただ旅先で居合わせただけの隣人にも他愛ない話をしたりするだけだ。
その中で太宰と芥川をどんな関係だと聞いてくることもあるが、そういう時は兄弟であると答える。お互い忙しくゆっくり話す暇もなかったが、久しぶりに二人一緒に休みが取れたので思い切って旅行に出てみた、と言えば、だいたいのご婦人はそれはいいわね、と笑顔を返してくれる。
連れ合いの男性がなぜまた遊ぶところもないような温泉に、と追求してくる時は、常日頃忙しなくしているから上げ膳据え膳でのんびりしたいのだ、と返す。そうすると、現役時代は精力的に動いていたであろう彼らは、いい若い者が、と言いながら豪快に笑うのである。

とにもかくにも、普段異能力だの、探偵社だのポートマフィアだの、殺伐とした世界とは無縁の穏やかなところに身を置いて、互いを取り巻くしがらみから束の間でも離れてみたかったのだ。

そして今、太宰と芥川は近くの露天風呂から宿へと戻る道を身体のほてりを冷ましながら歩いていた。
部屋をとっている旅館にももちろん温泉風呂はあるけれど、ちょっと歩いたところに大きな露天風呂もあり今の時期なら人も少なく貸し切り状態ですよ、と宿の人間に勧められ散策がてら入りにいってきたのだ。
太宰と芥川が宿泊している宿は温泉街でも端の方に位置するためか庭が広く、教えてもらった露天風呂への通り道でもあった。庭に敷かれた飛び石を雪駄を履いた足で踏み越えながら歩いていると、夏の時分は色濃かったであろう草木が心なしか落ち着いた緑色に見えて、少しずつ秋が深まっているのだと感じる。
野山を縮小して宿の敷地に持って来たような庭はところどころ高い木もあり、いくつかの木陰を作っていた。

庭の景色を何とはなしに眺めながら歩いていると、すっと太宰が芥川の手を掴んできた。そのまま手を繋いで歩く形になる。周りに人の気配はないようだが、旅館の敷地内だ、いつ人が通るかも分からない。

「太宰さん」

遠慮がちに芥川が名を呼べば、太宰は手は離さぬまま言った。

「大丈夫だよ、誰もいない」

温泉で温まった身体は手の先までもその熱を残している。いつもは冷たい芥川の手も太宰が握ったらうっすらとその掌を湿らせていた。それに気がついた芥川が手を引こうとするが、太宰は離すことを許さない。かえって握る手に力を込める。

「それにしても、ご婦人方と言うのはおしゃべりが好きだねぇ」

太宰が言うのを芥川は頷いて同意を示した。
露天風呂から戻る途中、一組の老夫婦とすれ違った。老夫婦は太宰たちと入れ替わりで露天風呂に行くらしい。この方向であっているかと聞くので合っていると答えると、世間話のつもりなのだろう自分たちは夫婦でどこどこから来たと夫人の方が話しかけてきた。そして次にこちらの番だと言わんばかりにどういった関係でどこから来たのかを尋ねたのだ。悪気はない。ただ若い男二人が露天風呂に行った帰りだというのが珍しかっただけだろう。
太宰は笑顔を作って何度目かの兄弟説を返事として語ったのだ。

「本当は夫婦、なのにね」

半歩前を歩いていた太宰が立ち止まり振り向いた。芥川は少し俯き口にする。

「本当のことだとしても、やすやすと言えることではありませぬから…」

太宰と芥川の左手首には組紐で作られたブレスレットが通されている。昨日立ち寄った土産物屋で見つけた色違いのお揃いである。太宰が冗談めかして「指輪の代わりに」と買ったものだ。

「ねえ、芥川君」

太宰は言うなり近くの木陰に芥川の身体を引き寄せた。ぎゅ、と太宰の腕が芥川の細い身体に回され抱きしめられる。少しだけ身体を離して芥川の顔を上に向かせると、その唇に口づけを落とす。すぐに舌が割り入れられ、絡められ、芥川の口内を蹂躙し始める。誘われるままに芥川も舌を太宰のそれに合わせて動かすと、くちゅくちゅと水音を立て耳を侵す。芥川が口づけに集中していると太宰の手は背中から腰に降りてきて、はっきりとした意思を持って撫でさすってきた。

「んっ…はっ、だざい、さん。それ以上は…」

息継ぎで口元を緩められた隙に芥川は太宰に訴える。
太宰は互いの唾液で濡れた芥川の唇を指で拭うと耳元に口を近づけて言った。

「続きは部屋に戻ってからにしよう」

芥川のうなじまで紅く染まるのを太宰は満足げに見て、そしてそこにも口づけた。

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