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2016年9月 3日 (土)

蚊帳の外

チャレンジ一日一太芥。
PASH9月号のピンナップから。ちょっぴり大人向けの香り。

蚊帳の外

これは偶然と片付けてしまっていいのだろうか……

中島敦は部屋の中に流れる緊迫した空気を肌に感じながら、蛇に睨まれた蛙のごとくその場に立ち尽くしていた。
近くを流れる川のせせらぎが耳に心地よい温泉旅館の一室には四人の男が集っていた。武装探偵社の太宰治と敦、それにポートマフィアの芥川龍之介と中原中也である。
眉を八の字に下げて困惑の表情をする敦に、こちらをじっとりと睨む芥川。中也は苦虫を噛み潰したような顔でこめかみを引き攣らせているし、この中でひとり笑顔なのは太宰だが、よく見ると目は笑っていない。

何故こんなことになったのか、敦は必死に考える。
えーと、確か仕事で向かった依頼主のところで報告を終えてヨコハマに戻ろうとしたら、今日は町のお祭りだから見て行けと言われて、そんなことをしたら帰りの電車がなくなるからと丁重にお断りしたら宿をとると告げられ、教えられた旅館に来たら生憎と満室で相部屋になると言われ、僕はそのまま帰ろうと言ったのに太宰さんはお祭りを見て行きたいと駄々を捏ねて、仕方なしに案内された部屋へと足を踏み入れてみれば、ポートマフィアの二人が……あ、頭が痛くなってきた。

芥川と中也の姿を認めて、それこそ帰りましょうと懇願に近い声を上げた敦を無視して太宰は、案内してくれた旅館の人の「お知り合いですか?」の言葉に「ええ」と肯定の返事をしてしまったのだ。
さらには「それではお酒をサービスさせていただきますね」という提案に「嬉しいです」とずんずん部屋の中へと入っていってしまったから、敦もそれに続くしかなかった。
入ったはいいが、戸惑い動けない敦に向かって既にくつろぎモードの太宰が言う。

「敦君、何してるの〜こっちに来て座りなよ。疲れたでしょ」

太宰はどっかりと座布団の上に腰を下ろし、座卓の上に置かれた温泉饅頭の包み紙を開けている。饅頭を頬張り口をもぐもぐと動かしている太宰を見て、疲れているのは今この状況にです、と泣き言を言いたくなるのを堪えて敦は彼の隣りにそろそろと座った。
その間も芥川はこちらをずーっと睨んでいる。しかし、いつもの殺気立った視線というよりは、どちらかというと子供が拗ねているときのような目つきに似ている。
ほんの少し違和感を覚えたが、視線を合わせるのも面倒なことになりそうで黙っていた。

「あ、そーだ。敦君、せっかくだから温泉に入ってこよう。温泉に来たのに入らないのはもったいないよ」

言うなり太宰は立ち上がって部屋の隅に畳んで置かれている浴衣一式を手にした。
ほら、と敦の分も寄越してきたので受け取らないわけにもいかず、同じように立ち上がって大浴場に行くことにする。太宰と一緒に部屋を出るときもじろりと芥川に睨まれたが、気にしないようにした。

温泉に浸かったら少しすっきりしたのか緊張もほぐれてきた。太宰さんも一緒だし、ここはヨコハマとは違う。ポートマフィアと言えども目立つようなことは仕掛けてこないだろう、と敦はガチガチに構えるのをやめた。
部屋に戻ると食事の用意がされていて、旅館側の言ったとおりお酒は十分にあるようだった。食事を前にして気が緩んだ敦は腹が空いていることに気付く。
既に芥川と中也は席に就いており並んだ料理に箸を付けているようだった。芥川の向かい側に敦、中也の向かい側に太宰が座った。

「うーん、どれも美味しそうだねぇ」

太宰が暢気な声を上げるのに敦も頷き、いただきますと手を合わせて箸を伸ばす。
話すのは太宰と敦ばかりで、芥川と中也はほぼ無言だ。時折二人で二言三言言葉を交わすようではあるが、かなりヒソヒソに近い。それに敦に向かって合間合間に投げられる芥川の視線が痛かった。
なんとも気まずい食事をしているといよいよ太宰が向かい側の二人に言ったのである。

「ねえ、ちょっと二人でコソコソと感じ悪いんだけど」

明らかに不機嫌な声を出した太宰に、芥川はビクリと肩をゆらし、中也はハンと息を吐いた。

「相部屋は了承したが、仲良くするなんて一言も言ってねぇぜ」

中也の隣りで芥川は黙っている。チラチラと視線は送ってくるが何か言葉を発したりはしなかった。それを太宰は見逃す筈はない。

「芥川君も言いたいことがあるならちゃんと言えば。気にしてるのがバレバレで見られる方が落ち着かないんだけど」

太宰に言われては返さなければと思ったのか、あ、とか、う、とか口を開くが言葉にしてこない。しかも言われた太宰の方ではなくて、敦の方にばかりその目を向けてくるのだ。これには敦も居心地が悪くなる。
待てども言ってこない芥川に業を煮やしたのか太宰はふー、と溜め息を漏らすと敦の方に顔を向けた。

「まあ、いいや。敦君、お酌してー」

お猪口を差し出してきた太宰に敦は、はい、と返事をして徳利を持ち上げる。徳利を傾けて冷酒を注げば太宰が軽く礼を言ってお猪口に口をつける。
飲み干すとまた差し出してきたので再度注いだ。そんなことを数回繰り返した後、あとのほうは太宰は手酌で飲んでいた。

料理も食べ終わり満腹でお茶を啜っていると食器を片付けにきた仲居さんが「お布団ご用意しますね」と一度去って行った。
食器が片付けられると食事を取った部屋と本来の寝室である奥の間に二組ずつ布団が敷かれた。
当然探偵社とポートマフィアに分かれるものだと思っていたら、太宰が爆弾を落としてきた。

「布団、くじ引きで決めない。あ。じゃんけんでもいいよ」

「あ?」
「は?」
「え?」

笑顔の太宰に目を丸くする他の三人。
三人の顔には大きく「なんで?」と書かれてあるだろうが、太宰は気にせず進める。

「あー、この爪楊枝でいいや。敦君ペンあるー?」

突然振られて敦は条件反射であ、はい、と持っていたサインペンを太宰に渡す。太宰は爪楊枝を四本取るとうち二本の先を黒く塗りつぶし、その掌に楊枝の上だけを出して握った。

「はい、引いてー」

とまず敦の目の前に持ってくる。敦が引くと色の着いてない楊枝が。次に芥川の番で最後が中也だった。芥川は黒、中也は敦と同じ色なし、つまり残った太宰が黒。
敦と中也、太宰と芥川という組み合わせになった。
芥川は手の中の爪楊枝をぼーっと見つめている。中也は眉間に皺を寄せながら唸った。

「太宰、手前ぇ…」

「なあにぃ、くじだよ。くじ」

にんまりと口元を弧の形にした太宰に中也は、チッ、と舌打ちするだけだった。

「はーい。もう今日は寝ようか。疲れたしね」

言うなり太宰は奥の間の方に歩いていってしまう。それを見て芥川がおずおずと後をついていくのを敦が見届けていると太宰が振り向いた。

「敦君、おやすみ。また明日ね」

就寝の挨拶を告げると太宰は奥の間とこちら側の部屋の間にある襖をぱたんと閉めたのであった。
閉まった襖を呆然と見ていると、隣りから「あの野郎」という声が聞こえた。中也の方を見るとガシガシと頭を掻いている。そして敦に話しかけてきた。

「おい、お前中島…とか言ったか」

「敦です」

「敦、お前寝付きはいい方か?」

「寝付き、ですか。悪くはないと思いますけど、それが何か」

意味が解らず首を傾げていると、あー、とか、うー、とか言う中也が目に入る。

「もしかしたら夜中隣りの部屋から聞きたくねぇもんが耳に入るかもしんねぇからよ。何だったら耳栓貸すぜ」

聞きたくないもの?敦は口の中で呟いて、太宰さんか芥川のどちらかがいびきでもかくんだろうか、と思った。中也は複雑な表情をしている。これ以上は聞いてはいけないような雰囲気だった。

「耳栓、貸してください」

敦はそれだけ言うともう考えるのはよそうと思った。

一方その頃奥の間では、太宰と芥川が一緒の布団に入っていた。芥川を背後から抱きしめる形で太宰がピタリと付いている。その手は芥川の浴衣の合わせから潜り込み彼の身体をまさぐっていた。

「ん…だ、ざい、さん。隣りに、人虎、と中也、さんが…」

胸の飾りを撫でられたり、摘まれたりして快楽を拾いはじめている芥川が途切れ途切れに抗議する。吐息まじりの物言いに太宰はどこ吹く風で手の動きを止めることはなかった。

「気付かれたくなかったら、声を我慢することだね」

ちゅ、と芥川の首筋に口づけて太宰が囁く。それだけのことに身体を震わせる芥川が愛しくて、太宰のもうひとつの手が下部へと伸びていった。

「ねえ、敦君に嫉妬してたでしょ」

太腿の内側をさすりながら問えば芥川はさらに身体を震わせた。喉を甘い声で鳴らしながら答える。

「やつ、がれが、おしゃくを、した…かったです」

「ならそう言えばいいのに」

内股に這わせていた手を芥川の中心に持っていけば、それこそ艶のある声で啼いた。太宰は芥川自身を握り込んで扱き始める。

「でも、私だって面白くなかったんだよ…中也と二人で宿に泊まるなんて」

芥川の顔を振り向かせるとその唇に噛み付くように口づけた。

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