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2016年10月23日 (日)

HOME SWEET HOME【太芥】

べろべろに甘い新婚太芥が書きたいという欲求が出てきたので書いてみました、まる。
べろべろに甘くなったかどうかは謎。

HOME SWEET HOME

彼の人の考えていることを真から理解すること等無理に等しい。
それでも上司と部下であった頃の自分は彼の人が発する言葉を的確に理解しようと足りない頭をフル回転させたものだった。その為返事が遅れては叱責を受ける。そんな繰り返しの日々だった。
彼の人が組織を離れ、武装探偵社等という古巣ポートマフィアに仇なす処に籍を置き、敵味方として再会した後如何いった運命の悪戯か恋愛関係へと発展した今では、彼の人……太宰治の発言は既に彼の中で入念に熟考された末のものであると理解している為長く相手を待たせることなく頷くことが出来るようになった。

そんな折り、こちらににこやかな笑顔を向けて朗らかに告げられたのだ。

「芥川君、結婚して一緒に暮らそう」

流石にこの台詞には思考を停止せざるを得なかった。
そして久しぶりに自分の脳細胞が煙を上げるのでは?という程脳をフル回転させた。
結婚?自分たちは同性同士であり、敵対している組織に属しており、それよりも結婚だと?そんな話は今までに出たことがあっただろうか、気配すらなかった気がするが……まさか太宰さんに限って短絡的に口に出した訳ではあるまいに。結婚とは?
整理しきれない思考が頭を駆け巡ったが、そんな戸惑う気持ちとは裏腹に自身の口をついて出たのは平素と変わらぬ声音だった。

「では、住居はどの辺りに構えるのがよいでしょう?」

太宰さんと自分、芥川龍之介が結婚し新居を構えて同居を始めてから三ヶ月が経とうとしていた。
新居と言っても自分名義でセカンドハウスとして借りたマンションの1LDKの部屋だ。
ポートマフィアというヨコハマの暗部を取り仕切る仕事柄、セカンドハウスを持つものは少なくない。しかし一個隊の隊長という任は請け負っているが、幹部でもない自分は妹と暮らす住居が一つあれば不便も問題もなかったので、今の今まで必要とはしていなかった。
太宰さんにプロポーズ?をされて一緒に暮らすとなれば、妹と暮らす部屋に彼の人を連れてくる訳にもいかず、かといって太宰さんが借りているアパートの一室も武装探偵社の寮というからこちらが転がり込むのもよろしくない。
故に、自分が程よいところに一つ借りておけばいいだろうと考えたのだ。
妹、銀だけにはセカンドハウスとして一部屋借りたという事実は伝えてある。そこに誰と住むかまでは告げてはいないが、察するものはあったのだろう。銀もそれ以上は踏み込んでこなかった。

そうして二重生活のようなものを送っているうちに、お互い仕事が早く終わりそうな日や出先から直帰するような日は連絡をし合うのが常になっていた。
今日は確かどちらも早く仕事があがる日だったなと思い、帰り支度の済んだ身体で携帯端末を確認する。丁度良く太宰さんからのメールを受信し開くと、これから探偵社の職員で連れ立って食事に行くことになったと記されてあった。
探偵社の皆で移動となれば、普段の寮とは違う方向に足を向けるのは不自然に思われるだろう。今夜は寮に行くから、自宅には帰れないとのことだった。
期待を削がれたことにほんの少し寂しさは感じるものの、それを承知で選んだ現状なのだからと負担にならない返事を送ることにした。

ー僕も銀の家に行きます。
そう打ち込んで送信ボタンを押す。携帯端末の画面を閉じ上着のポケットに仕舞ったところで顔を上げると、ヨコハマの街を鮮やかな夕焼けが照らしていた。
妹の家に行くとは言ったが、向こうも今夜は仕事で遅い筈。一日に家族二人とすれ違ってしまうのも好ましいことではないし、滅多に見られない美しい夕焼けにしばらく身を置いておきたい気分もあって、妹の家よりは遠い彼の人との家に向かうことにした。

帰り道を急ぐ人並みに混じって夕暮れの街を歩き、マンションに着く頃にはだいぶ日が傾いていた。
そう大きくはないが新しくセキュリティのしっかりとしたマンションのオートロックを開けてエントランスへと入る。郵便受けの並ぶ壁から自分たちの部屋の番号の扉を開け、郵便物を確認する。住所変更等ほとんどしていない為、ここにあるのはダイレクトメールやマンション管理部からの通知ぐらいなものである。
エレベーターに乗り込み部屋のある最上階を示すボタンを押した。

部屋の中に入り小さく「ただいま」と呟く。
ここで暮らし始めた頃彼の人が言ったのだ。誰も居なくても、いってきますとただいまを言おうと。その方が二人で暮らしている感じが出ると。
誰も居ないのでは物悲しいだけなのではないかと思ったが、続けていると不思議と習慣づくもので、それにここには居ない彼の人の「おかえり」が耳の奥に思い出されてほっとした。

簡単な夕食を済ませて時計を見れば、子供ですら就寝には早い時間帯だが、特にすることもないので寝てしまおうと思った。
風呂は好きではないが、毎日入りなさい、という彼の人の声を思い出しシャワーを使うことにした。
妹との暮らしではほとんどの日用品を妹任せにしていた為、ここでの諸々を揃えることは新鮮だった。シャンプーやボディソープにも特にこだわりはなかったのだが、二人でどんな香りが好みか、どんな手触りがいいかと選んでいくのは思いの外楽しい作業だったと記憶する。
彼の人の「いいね、いかにも新婚ぽくて」と嬉しそうに言うのを見るのが好きだったのかもしれない。

彼の人が居たら烏の行水と揶揄されたであろう時間で浴室をあとにしたが、洗うべきところは洗ったから問題はあるまい。
寝室のドアを開けると彼の人の香りがした。もちろん彼の人だけの香りではないのだろうけれど、自分の匂いがどんなものかなんて自分では解らないものだ。だから、彼の人の香りと思っていた方が幾分か気分が昂揚する。
成人男性二人が寝ても狭さを感じないダブルのベッドに倒れ込み、丸くなる。
今頃彼の人は何をしているだろうか……考えようとして、誰といるのかを思い出して、考えるのを止めた。
いつも彼の人が寝ている場所に顔を埋めて眠りに就いた。

廊下に人の気配を感じて目を覚ます。
ゆっくりと身体を起こせば寝室のドアが静かに開いた。フットランプ代わりに置いた間接照明の明かりに照らされるシルエットは、眠りに就く直前まで想っていた人だった。

「やはり、ここに居たね」

既に外套は脱いである太宰さんが近づいてくる。
僕の居るベッドまでやってくると傍らに腰をかけた。
そうしてこちらの頬に掌を滑らせて言った。
「ただいま」
「おかえりなさい。今夜は寮に戻られるのではなかったのですか?」
寝起きの掠れた声で問えば、くすりと笑う音がした。
「そういう君だって、銀ちゃんのところに行くと返事しておきながら、ここに居るじゃないの」
太宰さんの手は言いながらずっと僕の頬を撫で続けている。
「それは……太宰さんの香りがするところに帰りたかったからです。そこが僕の帰る場所ですゆえに」
素直に白状すれば相手の目が見開かれるのを見た。
「……芥川君」
「はい」
呼ばれて返事をすれば妖しく光る瞳とかち合う。
「好いてる相手にそんな可愛いことを言われて、何もしない男がこの世に居ると思う?」
太宰さんの手は僕の頬から首筋、肩先へと撫でるように滑り落ちていた。
「それも最愛のパートナーに……」
そうっと押し倒されて見慣れた天井が目に入る頃、自分は朝まで寝かせてもらえないことを悟るのだ。

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