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2016年10月 7日 (金)

出目金 一 【太芥】

文スト、太芥でマフィア時代の太宰さんとやつがれちゃんを捏造たっぷりで書きたいと思います。タイトルが解りやすくて申し訳ない。
アニメ13話がいきなりの黒の時代でかなり影響されていると思います。
生暖かく見守っていただけると嬉しいです。

出目金 一

初めてその子を見たのはいつだったか。
時期は忘れてしまったけれど首領に連れられて出かけた時だったと記憶している。
ヨコハマの暗部を司るポートマフィアという組織にとって貧民街もまた自領域の一部だと思っている。しかしながら、貧民街は貧民街で独立したひとつの領域であり独特のルールを持って息をしているところから、おいそれと手を出せる場所でないことも確かだ。だから常に隣り合わせていることを自覚し、相手に対して匂わせてもこちらから容易く近づいたりはしない。
通りすがっても用はないという顔をして歩け、というのが上からの命だ。

その日も貧民街の近く、領域と領域の境に位置する所謂グレーゾーンを歩いていた。
首領に食事に連れていかれたか何かで車の停めてある場所まで、首領とエリス嬢と私、太宰治の三人に加え護衛が幾人かで移動をしていた。
不意にどさり、という重量のあるものが倒れ落ちる音を耳にする。
建物と建物の間人が一人通れるだけの路地の奥に目をやると、小さな影が見えた。
褪せて元の色が解らない上に薄汚れて斑に黒ずんでいる襤褸を着たそれは子供のようだった。ぼろぼろとほつれきっている袖口や裾口から覗く腕と脛は棒切れのようにガリガリで、同じように細い首の上に丸い小さな頭がちょこんと乗っていた。
こちらに背を向けているので顔は見えないが、ざんばらに切られた黒髪は遠目に見ても埃と体脂でギトギトに汚れているのが分かった。ただ、耳元に垂れた毛先の部分だけが色が抜けているのか、陽の光に鈍く銀色に輝いていた。

(貧民街の孤児か……)
私は口の中で呟いてその子供から少し横に視線を動かす。子供の足下に人が転がっていて、そちらは痩せてはいたが頭の大きさからいって大人のようだった。
貧民同士の喧嘩だろう。子供の方が運良く大人を突き飛ばせたのだろうか。突き飛ばした先に何か鋭利なものがあったのか、倒れている相手の腹回りに血溜まりが広がりつつあった。
つまらないものを見ちゃったな、と目線を外し先を歩く一行の元に行こうと頭を動かしかけた時だ。
子供の服の裾がゆらりと揺れたのだ。
風に動かされたのとは違う。重力に逆らうようにふわふわと浮き、裂けるように分かれた布が其の先を刃物のような形に姿を変えた。そうして布で作られた切先を転がったままぴくりと腕を動かした相手に飛ぶような速さで突き刺したのだ。
そこで相手は事切れて、すっと抜かれた布製の刃は逆再生でも見ているかのように襤褸の裾へと戻っていった。

(異能だ!)
思わず目を見開き、知らず路地奥の子供の方に片足を踏み出していた。
じゃり、という砂と小石を踏む音にずっと背を向けていた子供がばっとこちらを振り向いた。
小さな顔に埋め込まれた大きな黒曜石のような瞳とかち合う。ぎょろりとしたその目は驚きと恐怖と殺意がごちゃまぜになっていた。
ぶわっと子供の服の裾が持ち上がるのを見て、まずいと思った。向こうからこちらまで距離はあるから刺される心配はないと思うが、騒ぎを起こすのはよろしくない。
珍しく困っていると、少し離れたところから声を掛けられた。

「太宰君、早く来なさい」

その声は奥に居る相手にも届いたようでくるりと背を向けられ駆け出していった。
ふっと息をつき、私も呼ばれた首領の方へと向き直り返事をして歩き出した。
「すみません。今行きます」
数メートル先で首領とエリス嬢が手を繋いで立っているのが見えた。歩みを止めた私に気付いて待っていてくれたらしい。
「どうしたの?だざい」
エリス嬢が首を傾げて聞いてきた。と、同時に空いている方の手で私の手を握る。
「いえ、猫がいたようなので……」
握り返して答えれば「ふうん」という音の後に「かわいかった?」と続けてくる。
歩きながら思い出してみる。
「野良猫ゆえに汚れていたので可愛いかどうかまではわかりません。でも野良猫らしく動きは速く耳も良いのか、首領の声にさっと逃げていきました」
にっこり笑ってみせれば、エリス嬢は丸く滑らかな頬を膨らましてきた。
「ええ〜わたしも見たかったなぁ。リンタロウのせいで逃げちゃったじゃない」
突然矛先を向けられた首領は大袈裟に肩を落とし「えええ〜」と情けない声を出していた。

でも、野良猫というよりは、なんというか……
ひらひらと揺れる服の裾と小さな顔にアンバランスなほどの大きな瞳。
水中に揺蕩うある生き物を思い浮かべて、私は自然と口元に弧を描いていた。

続く

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