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2016年11月22日 (火)

君が好き【太芥】

いい夫婦の日太芥。
そしてtwitterにて#良い太芥の日タグに参加させていただいてます。

なんてことのないオフの日の、なんてことのない過ごし方。

* * *

永遠なんてものはどこにもないと信じている。
だから今掴んでいるものを離さないようにするだけだ。
けれど、いまいち素直じゃない私はその気持ちを上手く君に伝えられないでいる。
君は知っているかな、私の本当の心を。

* 

「芥川くーん、洗濯物取り込んだよー」
ベランダに出る窓を閉めると、私は廊下の奥に居る芥川君に声を掛けた。彼は今浴室の掃除をしている筈だ。水を流す音で聞こえていないかもしれないが、彼ならば私の声を拾うのではないかと思う。たとえ声が届いていなくとも、家の中に声をかける相手が居るという現実はどこかほっとする。
取り込んだ洗濯物は快晴という天気のおかげでカラリと乾き、強すぎない柔軟剤の香りを鼻腔に届けた。決して畳むのが好きと言う訳ではないが……むしろ苦手な部類の作業であるが、彼がリビングに戻ってくるまでの暇つぶしには丁度いい。
そう多くはない彼と私の洋服をきれいとは言いがたい畳み方で片付けていくと、パタパタとそれでいて控えめな足音をさせて芥川君が部屋に入ってきた。

「太宰さん、ありがとうございます」
風呂掃除のために捲っていたのであろう袖を下ろしながら彼は礼をいってきた。共同生活を送るのに家事の分担は当然のことであろうし、それ以前に実際はほとんどの家事を芥川君が行っていて、私は常に手伝いポジションに位置しているから礼を言われる程のことでもない。
そして、向かいに座って残りの洗濯物を畳もうとする彼を制して私は言った。
「もう終わるからいいよ」
ほとんどを畳み終わり、二、三枚のタオルが前に重なっているだけである。すぐに片付けられる。
「そうですか……では、茶の用意をしてきます」
言われた芥川君は下ろしかけた腰を再度上げるとそう告げて、台所へと向かっていった。確かに午後のお茶を楽しむのにいい頃合いだ。
私は不格好に畳まれた洗濯物たちを赤子を抱き上げるかのように大事に抱えて寝室へと運んだ。

秋の日はつるべ落としと言ったもので、夕刻までにまだまだ時間があるというのにだいぶ日が傾いている気がする。それでも建物の上階に位置するこの部屋は秋晴れの明るい光りが射し込み、リビングを柔らかく照らしていた。
二人掛けのソファにゆったりと身体を預け、私と芥川君は香りのよい緑茶を飲んでいる。芥川君の手によって丁寧に入れられたそれは口に含むとほんのりとした甘みも感じられて、日頃の喧噪がゆっくりと身体から剥がれていくような気がした。
隣りに座る彼は椀の中の茶にふーふーと静かに息を吹きかけている。横顔に垂れた髪の毛がその息にほんの少し揺れるのを眺める。
飲み頃になった一口を口に含み、こくんと飲み込むその姿を飽くことなく見つめていると視線に気がついた彼が聞いてきた。
「如何かなさいましたか」
無意識なのだろうか、大袈裟ではない僅かに傾げられた首。温かい茶によって血色のよくなった唇は同じく茶の所為で濡れて艶めいている。
くちづけたい気持ちが沸き起こるが、せっかく入れてくれた茶を冷ましてしまうのも勿体ない。
「いいや。美味しいお茶だな〜と思って」
微笑んでまた茶を啜る。舌に触る渋みも厭味なく心地よい。
「気に入ってもらえたのなら良かったです」
ほっとした声音で芥川君が返す。彼もまた次の一口を飲んでいた。

「夕飯は如何致しましょう?」
茶を飲み終える頃、芥川君が聞いてきた。
「外で摂りますか?」
「んー、何処か行きたいところでもあるの?」
最後の一口を飲み込んだ後、尋ねてみる。昨日は家で鍋を作って食べた。
特に何かの鍋という訳ではなく、水炊きのような出汁に好きな具材を放り込んで煮て食べたのである。鍋と言うのはこれと決めなくても出汁さえ美味ければ、割と何でも美味しく食べられるものだと知った。
「いえ、何処かあてがあるわけではありませぬ。ただ家で摂るとなるとまた昨日のような鍋になるかと思いまして。僕は構いませぬが、太宰さんは続けて同じものはお嫌ではありませぬか?」
「いいよー鍋。昨日も美味しかったし、折角の休みだもの、このまま家でのんびりしたいなぁ」
湯のみを卓の上に置いてどっかりと背もたれに寄りかかった。横目に、君はどう?と視線を送れば「僕も同じ気持ちです」という呟きが耳に届く。
その答えに満足をして大きく頷いた。
「締めは雑炊かな、うどんかな。あ、まだお酒残ってたよね。今日は温かいし、今夜は冷やで飲もう」
「僕は少しでいいです。後片付けが出来なくなりますゆえ」
「そう言って君、昨日もちょっとしか飲んでないよね〜しかも、結局後片付けは今日起きてからしたじゃないの」
「そっ…れは、あの後、その……色々あったからで」
昨夜のことを思い出したのか芥川君の声が小さく窄み、目元が朱に染まっていく。
そういう反応はこちらを煽るだけなのだけれど……?
意図してしている訳ではないのは重々承知でそんなことを思ってみる。

「ねえ、芥川君」
私は左腕で彼の肩を抱き引き寄せた。
「何でしょう、太宰さん」
抱え込まれてこちらの胸に倒れてきた彼が尋ねる。
「知ってた?君が思うよりずっとね、私は……」
そこまで言って私は彼の、はい、の形に開こうとする唇を塞いだ。

君が好き

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