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2016年11月 1日 (火)

小さき魔女の小さな手のひらに【太芥】

診断メーカーによる“芥川が太宰にtrick or treatと言うと、冷たい眼で「それは何?スイーツ?スナック?」と聞かれます。”というタイムリーに黒の時代っぽい結果を受けてのハロウィーンネタです。
さらにフォロワーさんから口渡しでお菓子が与えられるという萌えを頂きましたので、使わせてもらいました。
あと、エリスちゃん絡ませたかっただけのタイトル。

小さき魔女の小さな手のひらに

「trick or treat!アクタガワ」
ポートマフィア本部のある建物の長い廊下を書類を持って歩いている少年に、一見するとこの場には似つかわしくない少女が声を掛けた。
円錐形に広いつばのある黒い帽子に黒いワンピースという姿は魔女の仮想なのだろう。くるくるとした巻き毛のブロンドが照明の光りをキラキラと反射させて美しく下ろされていた。
しかし魔女、というには肘の辺りで一度絞られ袖口に向かって広がっている袖は黒の総レースであるし、スカートの裾は幾重にもフリルが施されていて大きく膨らんでいる。普段の彼女の衣装から考えても、きっと贈り主である首領の趣味が大きく反映されている衣装なのだ。
「エリス嬢、ハロウィーンですか」
声を掛けられた少年、ポートマフィアの構成員芥川龍之介は、目の前の少女ポートマフィア首領の愛し子エリスに頭を下げてから尋ねた。
「あら、アクタガワ。ハロウィーンを知っていたの?」
魔女の格好をしたエリスが意外といった顔で返してきた。数ヶ月前に最年少幹部が貧民街から拾い上げてきたというこの少年がハロウィーンを知っていたとは……解らないと返されるのを承知で声を掛けてみたが、知っていたことに少なからず驚いているようだった。
「銀……妹がお世話になっている紅葉女史の元で教わったと。先日本人から僕もどんな行事か聞きました」
芥川は正直に答えた。
「じゃあ、trick or treatと言ったらどうするかも解るわよね?」
エリスが可愛らしく首を傾げて見せると、芥川が少しだけ困ったように眉を下げた。
「生憎と、僕は今エリス嬢にお渡しできるような菓子を持ち合わせておりません。申し訳ありません」
そう言って芥川はきっちりと頭を下げる。知ってはいても自身に関わりがあるとは考えていなかったのだ。
芥川の謝罪を受けてエリスは両手を腰に充ててポーズを取ると言った。
「しょうがないわねぇ。それじゃ、悪戯をするわ」
楽しいことを見つけたという風に笑顔を浮かべる彼女に芥川は軽く身構えた。首領のお気に入りの少女、構成員たちと直接関わることは少ないがその言動は我が儘が過ぎる時があると聞く。どんな難題が持ちかけられるかと芥川は身体を強ばらせた。
「そうねぇ……でも、アクタガワに悪戯してもあまり面白くなさそう。そうだ!いいことを思いついたわ。アクタガワ、ちょっと来て」
言うや否やエリスは芥川の手を取り長い廊下を歩き出した。

コンコンコン……
控えめに三度ドアをノックする音が聞こえたので、やっと待ち人が来たかと太宰は眼を通していた書類から顔を上げた。
「入り給え」
短く告げるとすぐさま書類に視線を戻し、今ノックされたドアがゆっくりと開いて黒い影が入室するのを待つ。
「失礼します」
簡単な使いを頼んだ筈の部下が思いの外時間を掛けて戻ってきたので、太宰は一言言ってやるかと再度顔を上げて口を開いた。
「芥川君、君ね、書類を受け取りに行くだけでどれだけ時間を……」
掛けているんだい、と続く筈だった声は途切れドアの前に立ったままの部下に太宰の視線は縫い付けられた。
「芥川君、それ何?」
書類を片手に直立する部下、芥川の頭上を指差す。そこには黒い猫の耳が着いていた。
何だと問われた芥川は咄嗟に何と答えていいものか判断がつかず、視線を泳がせ口を開きかけては閉じ開きかけては閉じ、を繰り返した。
問うた太宰も次が繋げられない。
時間にすれば数十秒の沈黙の後、金魚のごとく口をぱくぱくさせていた芥川が意を決したようにつかつかと執務机に座る太宰に近づき言ったのだ。
「太宰さん、トリックオアトリート……です」
終わりは尻窄みになったが、何とか言い切った芥川はほっと息を吐く。
言われた方の太宰は呆気に取られた顔をしたあと、すぐにいつもの表情を取り戻し、訓練で失敗した時のような冷たい眼を芥川に向けて言い放った。
「それで、それは何?スイーツ?スナック?私が菓子を持っていなかったら君は悪戯するつもりなの?」
太宰は机の上で頬杖をついて目の前に立っている芥川を見上げている。
先の台詞を言うだけで精一杯だった芥川は太宰に尋ねられても答えられない。エリスに指示されたのはここまでだったのだ。

どこか悔しそうに顔を歪める芥川を見て太宰はやれやれと溜め息を吐く。
大方ハロウィーンを楽しむエリスにけしかけられたのだろう。頭に着けた猫耳のカチューシャもエリスが用意したものか。太宰は全てを察知して、これ以上は芥川に出来ることはないなと踏んで頬杖を解いて固まったまま立ち尽くしている芥川に話しかけた。
「丁度良く、先ほどお茶とお茶請けを運んできてくれたよ。それをあげるから悪戯は勘弁してくれ」
告げた太宰の顔を見下ろして心底安心したような表情を見せる芥川は、持っていたままだった書類をやっと机上に下ろした。
太宰はそれを横目で確認すると、次に机に置かれたティーカップと焼き菓子の置かれた皿を見た。
しっとりと焼かれたフィナンシェをひとつ手に取ると芥川にも見えるように軽く持ち上げる。これを受け取ればこの遊びも終わりだと安堵した芥川がその手を差し出したところ、太宰はそれを彼の手のひらには載せず自身の口元へと運んだ。
てっきり貰えるものだと思っていた芥川は目を見開き、太宰の顔を凝視する。
太宰は芥川の視線を受けながら持っていたフィナンシェを唇で挟み、ん、と言って両手を広げてみせた。
芥川は差し出した手を空中に泳がせながら太宰の意図するところを汲み取ろうとする。手に渡してもらえないならどうすればいいというのか。ぐるぐると思考を彷徨わせていると、再度太宰が、ん、と言い少し首を伸ばして顔を前に突き出すような仕草をしてきた。
広げていた腕の片方を動かし自身の口元を指差し、次に芥川の口の辺りを指差す。
口に咥えている菓子を口で受け取れということらしい。

芥川は躊躇った。豪奢な椅子に深く腰掛けた太宰の顔に自身の顔を近づけるには、相手の膝上に乗り上がる形を取らないと難しい。上司と口から口への受け渡しをするだけでも緊張するのに、さらにはその身体に乗り上げる等芥川には相当な覚悟が必要だった。
しかし早く取らねば口に咥えられた柔らかな焼き菓子は崩れて落ちてしまうだろう。ぐずぐずとして上司の趣向に応えられなければ、さらに冷たい仕打ちが待っているに違いない。
どんなことであろうと師でもある上司を幻滅させることは避けたい。
芥川は震えそうになる身体を奮い立たせて椅子に座る太宰に近づいた。
太宰は椅子に深く腰掛け、肘掛けに腕を置いたまま待っていた。芥川は短く「失礼します」とだけ言って、なるべく体重をかけないように太宰の膝に乗り上げた。
太宰の腕に手をつき恐る恐る咥えられたフィナンシェに唇を近づける。
唇の震えを抑えることは出来ず、ふるふると震わせながら目的に触れた時お互いの吐息も肌を撫でた。
そろそろとフィナンシェを咥えた唇を太宰のそれから離すと、相手は口を開いて菓子を渡してくれた。
急いで乗り上げていた身体を後ろに引き、咥えた菓子が零れ落ちないように手で支える。手を添えたまま柔らかく甘いフィナンシェを口の中に引き入れ、咀嚼し飲み込んだ。

「ありがとうございました」
食べ終わった芥川が頭を下げる。
「エリス嬢にでも唆されたんだろうけど、少しは後先を考えてきなさいよ」
太宰はカップに入ったお茶を一口飲んで言った。はい、と項垂れる芥川を見て太宰はふと思いついた。
「ところで芥川君」
「はい、何でしょう」
「trick or treat」
太宰はにっこりと笑って言った。
「え……?」
解らないといった表情を浮かべる芥川の腕を引き寄せ、太宰はその細い身体を腕の中に閉じ込める。
またも膝の上に乗る形になった芥川は立ち上がろうとするが、太宰の腕は力を緩めない。
「芥川君、お菓子をくれないと悪戯するよ」
当然菓子等持っていない芥川は返せる言葉もなく、器用に外套を脱がされ晒された項に太宰の唇を受けるのであった。

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