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2016年11月 9日 (水)

紅いの葉のかんざしひとつ【太芥】

twitterにてフォロワーさんの素敵な紅葉太芥イラストを見たら逸る気持ちを止められなかったよ……紅葉狩りデートの太芥です。太宰さん視点。
タイトルは「くれないのはの」と読みます。

「芥川君、紅葉狩りに行こう」

私の急な誘いにも戸惑いながら頷く姿を容易に想像できて、自分で自分を可笑しく思った。
この世に自分の思い通りになること等何一つないと解っているにも関わらず、殊の外彼については自惚れ屋に成り下がる自分にもう一人の自分が苦笑を浮かべる。だがきっと彼は了承すると奇妙な自信が持ち上がる。
「紅葉狩り……ですか」
そんな風に躊躇う声音を耳に拾えば、もう先は視えている。
「僕の都合のつく日時は……」
携帯端末のスピーカーの向こう、予定を口にし出す声に自分の口元が大きく緩むのを感じた。

紅いの葉のかんざしひとつ

さくさくと乾いた落ち葉を踏みつけて歩く。
紅葉を楽しむ為の散策道を備えた小山とて山は山、麓よりも空気はつんと澄んで冷たさを肌に届けてくる。
人口の散策道を敷き詰める赤黄の落葉を見るかぎり、もう山は晩秋の頃に入っているのだろうなと思う。
空気が冷たいとは言ったが、今日は快晴で日差しは柔らかくほんのりとした温かさも伝わってきた。落葉の量が多いということは頭上を覆う木々に残る葉は少ないということで、高く青い空がよく見える。
すでに見頃は過ぎ行き交う人の影も少ないこの日は、他人の目を特に気にすることなく歩くことができ私も上機嫌だった。
何より隣りを歩く彼の目がつやつやと輝いているのを見て、連れてきてよかったと心の底から満足を覚えた。

どんどんと道の奥へと進んでいく。すっかり人の気配も消えたので、私は彼の手を握り指を絡めた。時折風に揺られてひらひらと舞い落ちる紅葉を目で追いかけていた彼は、前触れもなく取られた手に驚いたようで、ピクリと肩を震わせこちらの顔を零れんばかりに瞳を開いて見つめてきた。
年よりも幼く見える表情に私も思わず何の狙いもない笑顔が零れる。
「あの、太宰さん……手が。人が来ては……」
しどろもどろに言葉を繋げては、私の顔と繋がれた手を交互に見やる。
「もう誰も居ないようだし、喩え誰かとすれ違っても山道で足下が頼りないことにすれば問題はないよ」
山道とは言ったが整えられた遊歩道で足下も何もない。私にしては幼稚な理屈だな、と思うものの、この手を離さぬ言い訳が出来るのなら何でもよかった。
「そう、ですか……」
そして彼もまた私と同じように繋いだ手を離しがたく思ってくれているようで、すんなりと受け入れると緩く握り返してくれるのだった。

途中細く流れる小川に散った紅葉が密に並んで進んでいくのを目にして、なるほどこれは歌にある通り錦織だなと感じて、子供が小さな発見をしたときのように嬉しくなった。
手は繋いだまま、触れたところから相手の温もりを意識しては今ふたりで同じものを見ているのだと改めて実感する。
ゆっくりとではあるが山道を登っていることにはかわりがないので少々疲れも出てきた。幸い数日前から天気に恵まれていたらしく、道の傍らに敷かれた落ち葉の絨毯はカラッと乾いているようだった。
「ねえ、芥川君。少し腰を下ろして休憩しようか。帰りもあるし歩きっぱなしはよろいくないよ」
提案すれば頷く彼がいる。芥川君はくるりと見渡して言った。
「シートのようなものは持ち合わせておりませぬが、落葉の上に座っても汚れなさそうですね」
「うん。その辺でいいから座って休もう」
私は彼を促し僅かに傾斜した遊歩道脇に腰掛ける。彼は腰を下ろすと身体に斜め掛けしたボディバッグから小振りなステンレスタンブラーを取り出した。
「少しでも喉を潤せたらと茶を入れて持ってきました」
どうぞ、と差し出す彼に私はにっこりしながらコートのポケットに手を入れる。
「実は私も途中の茶屋で買ってきたんだ」
そういって小さな栗饅頭を取り出して見せた。
またも目を丸くした芥川君が私の手元の小さな包みを見て微笑みを浮かべる。
「用意がいいですね」
笑う君に私は饅頭をひとつ手渡した。

栗饅頭とお茶で人心地ついた私たちはさわさわと風にその身を委ねる紅葉を眺めていた。
すっかり熟した葉たちは時がくると風がなくとも地に降りてきた。中には私や芥川君の肩や膝元に落ちてくるものもある。それを上を向いて落ちてくるのを待ってみたり、我が身に停まった葉を摘んで日にかざしてみたり、のんびりとした時間を堪能していた。
ふと白い手がこちらに伸びてきたので、伸ばしてきた本人に目を向ける。目が合うとはにかみながら私の髪に触れる。
「落ち葉が髪に付いてました。可愛いのでそのままにしていようかとも思ったのですが……」
私の頭から取ったらしい楓の葉をくるくると指先で回している。
珍しくにこにこと笑った顔を見せるので、楓を持ったままの手を取り引き寄せた。そのままするりと薄い背中に腕を回して、静かに落ち葉の積もった落葉樹の根本に倒した。
「太宰さん?」
まさか押し倒されるとは思っていなかったであろう芥川君が所在無さげに聞いてくる。
「私も君があんまり可愛いので押し倒してしまったよ」
我ながらどうかしてる言い分だ。
だけれど、ゆっくりと顔を近づけていって紅葉の如き紅い唇に吸い付けば応えてくれることを知っている。
唇に唇で触れて、上唇下唇と順に食んでいって薄く開いた隙間から舌を忍び込ませれば絡むそれ。君の吐く息すらも逃したくなくて執拗に追いかけると、苦しそうにひそめる眉に、んっという甘い声。
両の掌で包むように抑えていた頬から首筋にかけて片方だけ撫で下ろす。少しだけ緩めた襟元から手を差し込んで鎖骨をなぞった。
隙間から入って触れた空気が冷たいのかふるりと身体を震わせたので、唇を一度離して問いかける。
「寒かった?」
額に額を付けて鼻先を擦り合わせるように、僅かでも空ける距離は少なくなるように。
「いえ。でも……」
ほんのり上気した頬で芥川君は口を開く。先ほどまで強く吸っていた舌が赤くちらつく。
「なあに?」
自分でも甘いと感じる声音で聞き返す。
「それ以上触れられると我慢が効きません」

逸らされた視線、伏せた瞼に濡れたような睫毛。
私はひとひらの紅葉を手にすると彼の黒髪にそっと挿した。

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